「安心感を考慮した情報提示基礎検討」

高橋 孝輔 

 

 技術の発展と並行して,社会の安全を守る技術も発展してきた.

これまでのヒューマンファクタを考慮した安全支援には,見やすい表示/標識,

エラーを防止する操作盤,緊急時のコミュニケーション支援,などがある.

これらは安全を提供することで間接的な安心感を提供しており,安心感そのものを

ユーザに提供するものではない.

また,不安感はすべて排除すべきものではなく,安全意識の薄れた時に

エラーや事故が起こる危険が高く,状況に応じた適度な緊張感は安全を保つために

必要である.

 

 本研究では,インタフェース工学の立場からインタフェースにおける安心・不安要素を明らかにし,

今後の安心・安全支援に役立てる事を目的とする.インタフェースには,物理的側面

(デバイス,メディア等)と認知的側面(表示方法,内容など)がある.ここでは,

インタフェース研究の第一段階として,情報表示方法におけるユーザの安心感,不安感への

影響を明らかにする.

 

 まずは,要素として,色を用い,情報提示の際にSD法によるアンケートに回答してもらった.

色の選択については,色の3要素である「色相」「明度」を基準にし,背景,字の組み合わせで

134種類の色を作成した.

分析には,数量化理論第V類を用いて,安心を感じる色を得ることができた.

背景が緑色のものと,背景と字がともに明度の高いものが安心感を感じる色であるとわかり

,字の色に関わらず、背景が赤の時に不安を感じることが確認できた.

 

 また,同時にアンケートで用いた形容詞についても安心感と関連のあるものを抽出した.

「安心する」という感情に影響のある形容詞としては,「ホッとする」,「やさしくなる」,

「ゆったりする」,「リラックスする」が抽出された.

また,「不安になる」という感情に影響のある形容詞としては,「積極的になる」,「きびしくなる」

,「緊張する」,「心配になる」,「落ち着かなくなる」が抽出された.

その他,「見やすさ」因子については,安心感,不安感にはあまり関係ないこともわかった.

 

 更に要素として,音声を用い,「男性音」「女性音」「ロボット音」に注目し,設定として,

「読みの速さ」,「抑揚の大きさ」,「声質」,「声の高低」を変えることで23種類の音声

を作った.

この音声を使って色彩の時と同様に実験を行った. 

 

本研究では,インタフェース工学の立場から,インタフェースにおける安心,不安要素を明らかにし,

安心・安全支援に役立てることを目標としてきた.そこで情報の提示

方法におけるユーザの安心感,不安感への影響を明らかにするために,色と音声を提示する

安心評価実験を行うことで,結果,情報提示における安心要素を見つけることができた.

今後の課題として,色と音声以外の情報提示要素についても注目し,その後,

インタフェースの構築を行うことを考えている.