非線形制御理論を用いた倒立振子の安定化に関する研究
相馬 将太郎
システム制御の分野では倒立振子は最も良く使われる制御対象の一つである。ま
た、振子を立たせる技術はロケットの発射台を立たせるためや、水中翼船を浮か
せたときの安定化の為に使われている。
倒立振子の制御では、安定化の観点から平衡点まわりで線形化したシステムに対
し線形制御理論を適用する研究が多い。通常の線形ロバスト制御ではモデル誤差をある程度
許容するものの、振り子の角度に対する非線形性が大きいので、より広い安定領
域を得るには非線形性を積極的に考慮した制御が望まれる。そこで、平衡点まわ
りでのロバスト線形フィードバック則が平衡点から離れるにつれて非線形フィー
ドバックになるような制御器を構成する。
安定領域拡大のためには、非線形システムを状態フィードバックと入力変換で見
かけ上線形化する厳密な線形化法が適当と考えられるが、3次以上の系では必ず
しもこの手法が適用できずその解決法が重要である。倒立振子もこの例の一つで
あるが文献[2]において、この問題の一つの解決法として倒立振子系の特徴を生
かした近似的な厳密線形化の方法が与えられた。
また台車の位置や振子の角度は、センサによって計測できるが、
それらの数値微分を必要とすることから速度は直接手に入れることは困難であり、
オブザーバによる推定が必要になるが
従来の方法では線形系に対するオブザーバになってしまう。この点に対し文
献[1]で二次安定論に基づいた非線
形全状態オブザーバの構成法が与えられた。それにより得られた推定値によって
上記の非線形系を設計することにより、所望の特性を持つ制御系の構成の実現が可能になる。
そこで本研究では文献[1][2]の結果を統合することによって非線形フィードバッ
クと非線形全状態オブザーバにもとづいた制御系を構成し、実験により効果を検
証する。そして各種パラメータについての指針を検討し考察を行なう。また非線
形全状態オブザーバの構成法を利用することで最小次元オブザーバを設計する。
本研究は、H14年度より開始される電子システム学実験C制御システム実験の準
備ともなるので計算機に実装するに当たって誰でも簡単に振子の操作ができるように
GUI(GraphicalUserInterface)を設計した。
参考文献
[1]川谷、土井、外川:倒立振子系に対する非線形オブザーバの構成法、計測自動制御学会論文集、30-11,1408/1410(1994)
[2]佐伯正美:倒立振子の非線形コントローラ設計と厳密な線形化法、計測自
動制御学会論文集、29-4,491/493(1993)