アファインシステムの切り替えを用いたリミットサイクルの設計
足立正和
1.はじめに
切り替えシステムはハイブリッドダイナミカルシステムの代表的なサブクラスである.
本報告ではアファインシステムがある種の対称性を有するとき,リミットサイクルの計算とその安定性のチェック
が容易になることを示し,その結果をもとにリミットサイクルを発生するような切り替えアファインシステム
の設計を考える.
2.遅れつき切り替えアファインシステム
以下の遅れつき切り替えアファインシステムを考える.ここで“遅れつき”とはサブシステム間の切り替えが
瞬時には行われず,ある時間経過したのち切り替わることを表し,そのときの離散状態をdelayとして表す.
このとき,システムの離散状態の遷移はサイクリックであるとする.すなわち,1を初期離散状態としたとき,
1,2,3,...,kが繰り返すものとする.離散状態の変化はスイッチングサーフェスに連続状態が含まれたとき生じ,
添え字によって遷移先が表現される.
本報告では,各係数行列がある種の対称性を有する場合を考える.
3.リミットサイクルの存在性と漸近安定性
上記のような遅れつき切り替えアファインシステムがリミットサイクルを発生するとき,以下のような性質がなりたつ.
@.各代表点に対して漸化的な関係が成り立つ.
A.各離散状態における滞在時間は全て等しくなる.
漸近安定性については,リミットサイクルからの微小摂動に対する次の代表点への写像を考えることにより
判別することが可能 であり,さらに前述の性質から一つの離散状態の解析のみからシステム全体の漸近安定性を
判別することが可能である.
4.システム設計
あるクラスの遅れつき切り替えアファインシステムに対しては,任意に与えられたスイッチングサーフェスから
リミットサイクルを発生するような各係数行列を決定することができる.
本報告では,鏡面操作に対して不変なリミットサイクルと回転操作に対して不変なリミットサイクルの設計
の手法を述べた.
5.おわりに
本報告では,ある種の対称性を有する切り替えアファインシステムにおいては
リミットサイクルの計算・安定解析が比較的容易に行えることと,対称性から
変換行列を適切に探すことによって,リミットサイクルの設計が可能となることを示した.
しかしいずれにせよサブシステム同士が満足すべき拘束は厳しく,一般的な解法には至っていない.
今後はこの事を踏まえた上で,リミットサイクルのような時間が陽に現れる現象を定性的に解く,
又は時間に依存しないような形に書き換える等の新たな枠組みについて研究を進める必要がある.