ループ整形機能を考慮したILQ設計法に基づくCADの改良

    藤井研究室 90199120 中本 加那

 

はじめに

 ILQ最適サーボ系設計法とは,最適レギュレータの逆問題を応用し,漸近的閉ルー

プ系の非干渉化極配置ゲインとサーボ系の最適性を保証する調整パラメータによって

制御則を決定できる設計法である.酒井らによって拡張されたILQ設計法 [1]は,山

本によってGUI-CADに実装された [2].

しかし [2]には,オブザーバの自由度を利用したループ整形機能が実装されていな

い.

よって本研究では [2]にループ整形機能を実装する事を考えた.

 

ILQ法によるループ整形機能

1.ループ整形機能

 文献 [1]では,ILQロバストサーボ系に新たにオブザーバの設計自由度を付加した

構成を考え,目標値追従と観測ノイズの抑制の二つの閉ループ特性を同時に整形する

機能を持つサーボ系の統一的設計法が提案されている.

 しかし従来のILQ-CAD [2]には,観測ノイズを抑制するためのループ整形機能が実

装されていない.観測ノイズから出力までの閉ループ伝達関数に対し,ユーザが指定

する希望の伝達関数を決定し,同次元オブザーバの自由度を利用した自由パラメータ

を用いることでループ整形を行う.

その後に同次元オブザーバを, 閉ループ伝達関数の伝達極以外のユーザが指定する

希望の伝達関数の伝達極と制御対象の次数と同じ個数の極を共有するように設計す

る.

 

2.実装

 ループ整形機能の実装にあたっては,まずユーザが指定する希望の伝達関数を設定

するインタフェースを用意する必要がある.ここではユーザにフィルタの伝達関数及

びユーザが指定する希望の伝達関数の分母多項式の入力を促す.ユーザが設計する伝

達関とフィルタの周波数応答をグラフ表示し,設計者は希望の伝達関数とフィルタの

調整を行うことができる.その後ノイズがある場合の時間応答を表示する.

 

まとめと今後の課題

 本研究では [2]では実装されなかったループ整形機能を実装した.また,例として

位置制御を行う場合に出力の微分である速度を確認したい場合があることを考慮し,

出力の微分に加えて積分値を表示する機能も実装した.更にユーザに次の操作を指示

するなどのインタフェースの拡張も行った.今後,更なるインタフェースの改良並び

に今だ実装されていない機能の実装などが課題である.

 

参考文献

 [1]酒井,藤井:ループ整形機能を有するILQロバストサーボ系の解析的設計法,計測

自動制御学会論文集,36-4,340/347(2000)

 [2]山本:拡張されたILQ設計法に基づく制御系CADの開発(2001)