道路追跡のためのステレオ動的輪郭モデル
―モデルパラメータの学習と実道路画像を用いた評価実験―
学籍番号 90150012 所属研究室 谷内田研
氏名 井上 慎也
1 はじめに
現在、次世代の車に向けて、道路や車両のインテリジェント化に関する研究開発が盛
んに行われている。そのなかで、カメラで撮影された映像から先行車両の追跡や危険
車両や人物の特定など前方道路状態を走行しながら認識する技術は、非接触でかつ未
知の対象の認識ができることから、歩行者・運転者双方の安全性確保の点で必要不可
欠な研究要素と言える。
本研究では車前方のステレオ画像情報より、道路姿勢形状と消失点の関係に着目した
ステレオ動的輪郭モデルを用い、この重みパラメータの学習により、様々な道路状況
に際してロバストに道路境界線の抽出を認識し、道路形状情報の獲得、そして同時に
その3次元形状の復元を行う。
2 ステレオ動的輪郭モデル
道路境界線獲得の方法として、本研究ではCohenによって提案されたモデルに、左右
道路画像の消失点一致拘束と姿勢角変化の滑らかさの拘束を加えることにより,拡張
されたステレオ動的輪郭モデルを扱うものとする。
このモデルでは道路をコントロールポイント対(CP対)の集まりで表現し、このモデ
ルのエネルギーを最小にすることにより道路境界の望ましい位置に収束する。
3 モデルパラメータの学習
このステレオ動的輪郭モデルはそのエネルギーを調整する9つのモデルパラメータを
持つ。
また、ステレオ動的輪郭モデルの挙動は各エネルギー間のバランスによって決定す
る。そこで、様々な道路状況にロバストに対応させるため、パラメータセットを学習
に厳密に設定する。
学習において使用する画像は道路境界の明瞭度、照明条件などの様々な道路状況を含
む、全20シーンとする。
4 学習結果と評価
学習によって得られたパラメータセットの評価のため、学習に用いた画像を含む道路
画像6シーンと、学習に用いなかった道路画像4シーンを用いて、学習前後のパラ
メータによる道路境界抽出結果について、手入力で与えた真の道路境界との距離を収
束誤差として評価した。
学習により全体的に誤差が小さくなっており、収束誤差が8pixel以内のものを境界
抽出成功とすると学習前の94.0%から学習後には94.3%。また10pixel以上のもの
を、境界を抽出できずに破綻したとみなすと,学習前の4.87%から学習後の4.45%と
なり道路境界抽出精度とロバスト性の向上が見られた。
5 まとめ
ステレオ動的輪郭モデルの持つ重みパラメータの学習を行い、実道路画像を用いた検
証より、道路境界抽出の精度と道路状況に対するロバスト性の向上を確認した。