中間リンク可変直動固定型パラレルメカニズムの動作解析

新井研究室  高山 和也

1. はじめに

直動固定型パラレルメカニズムは,Fig.1のように,直動スライダー等のアクチュエータを全てベースプレート上に配置固定して,中間リンクの下端を直線的に動作,制御するパラレルメカニズムの一機構形式である.パラレルメカニズムはエンドプレートで各リンクが拘束されるため,動作領域が小さくなるという短所がある.そこで,作業に必要な動作領域を確保するために,リンクパラメータの一つである“中間リンク長”を可変にすることにより,動作領域の形状,位置を変化させるメカニズムを提案している.これを“中間リンク可変直動固定型パラレルメカニズム”と呼ぶ.このメカニズムは,中間リンク長を半固定的に調節することにより,作業に必要な動作領域に切り替えて実現することを目的としている.本稿では,“中間リンク可変直動固定型パラレルメカニズム”の動作領域の解析を行う.



Fig. 1

2. 平面2自由度モデルにおける動作領域解析

簡単のため,Fig.2に示す平面モデルを用いて動作領域を解析する.Fig.2の斜線部のように動作領域は,アクチュエータの両端を中心とした,中間リンク長を半径とする扇状の線に囲まれた領域となる.2本の中間リンク長が等しい従来の機構(Fig.2(A))を基準とし,エンドエフェクタを水平矢印方向に動かして変形した機構を作り出すとしよう(それに合わせて中間リンク長は変化する).変形量が小さい場合,変形機構の動作領域は基準機構の動作領域を矢印方向にシフトしたものになるが,短い方のLink2が中間リンクとアクチュエータと直交する特異姿勢になるため動作領域は狭くなる.ところが,変形量をさらに大きくしていくと,変形機構(Fig.2(B))による大きな動作領域が現れる.その結果,A,Bをまたいで連続的に制御することはできないが,中間リンク可変パラレルメカニズムとして作業可能な領域が広がる.



Fig. 2

3. 3次元6自由度モデルへの展開

上と同様の変形操作をFig.1の空間6自由度モデルに加え,動作領域の変化を解析した.全ての中間リンク長が等しい基準機構において各アクチュエータをストロークの中心に設定した姿勢を考え,Fig.3のように,高さと姿勢を保ったままエンドエフェクタをある方向φへdだけ移動させて変形機構を作り出す.それらの変形機構の動作領域の形状解析と,その基準機構に対する体積比・重心を用いた評価(Fig.4),そして特異値分解を用いた力学的評価を行った.



Fig. 3


Fig. 4

4. おわりに

本研究の結果,作業に応じて動作領域を調節する“中間リンク可変直動固定型パラレルメカニズム"が,従来の固定中間リンク長の機構では不可能であった領域に動作領域が設定できることを示した.