微細作業用自動焦点システム

新井研究室  加藤 陽介

1. はじめに

生物、医療、工学などの様々な分野での対象物の微小化に伴い、微小対象物に対する微細作業手法の確立が求められている。今までは、マイクロマニピュレータを用いての微小対象物の操作は主として人間が行ってきたが、非常に熟練を要する。また、操作工程についても、例えば細胞核の抽出といった単調作業を数百単位の細胞に対してこなしていく必要があり、こういった作業の自動化が期待されている。マイクロマニピュレータを用いた微細作業を自動化するためには、マニピュレータの指先と微小対象物を常に顕微鏡の焦点面上に置く必要がある。そこで、レンズを上下する事で指先への自動焦点(オートフォーカス)を行うためのアルゴリズムを提案し、その視覚システムについての考察を行う。

2. 自動焦点システムの設計・制作

自動焦点作業を行うためのシステムを設計しシステム環境を構築した。顕微鏡のノブを回す作業はモータを回転させる事によって行っている。

3. 指先への自動焦点アルゴリズム

微細作業においては、顕微鏡内を移動するマニピュレータの指先を常にトラッキングし、その位置に焦点面を合わせなくてはいけない。そこで、指先を検出する方法としてSobelオペレータを用いたエッジ検出を行い、画像の1次微分の大きさを計算し、累積濃度値(画素値)が最大のときに指先に焦点面があるという事を利用する。顕微鏡に取り付けたモータを一定角度づつ回転させ、その焦点面での画像の累積濃度値を求め、それが最大値の位置に焦点面を移動させる。さらに、指先の移動に焦点面も追従させ、その付近で評価値を求めてその最大値の位置に焦点面を移動させる。

4. 指先への自動焦点実験

モータを一定角度(1[deg])づつ回転させ累積濃度値を求め、値の最大値の位置に焦点面を移動させる実験を行った。さらに、指先の移動(約15[μm])に焦点面も追従させ、その付近(前後5[deg])で評価値を求めてその最大値の位置に焦点面を移動させる実験を行った。

実験結果より高精度な指先への焦点面の位置決めが可能である事が確認された。焦点面の追従の実験の場合も同様な結果が得られた。Fig\ref{指2つ}に焦点面が指先にない状態の画像とある状態の画像を示す。

5. おわりに

本研究では、マニピュレータの指先に焦点面を合わせる方法を提案した。また、自動焦点のためのシステムを設計・制作し、それを用いて指先に自動で焦点面を合わせる実験と指先に焦点面を追従させる実験を行い、その結果の評価をおこなった。

最終的には微細作業の自動化を目指す必要があるものと考えられる。