設計理由を考慮に入れたレイアウト設計支援
西田研究室 渡辺 正人
1.はじめに
近年,計算機は幅広い対象の様々な問題解決に利用されるようになり,ユーザインタフェースのような外面的な使いやすさとともに,ユーザの信頼を得るための内面的な親和性を持つシステム開発が重要視されてきている.本研究では,ユーザとの内面的な親和性を備えるシステムの核となる概念として問題解決者の考えや好みに焦点を当て,これを利用することにより問題解決を支援することを目指す.本研究が対象とするレイアウト設計においては,設計者の考えや好みは部品の配置における様々な解候補の中から決定的な解を選択する際の意思決定に大きな影響を与えていると考えられる.ここでは,設計者の考えや好みを設計理由という形で捉え,それを有効に利用することにより設計者の設計活動を支援するシステムを構築し,システムを用いた評価実験を行うことにより,その有効性の検証を行う.
2.システムの概要
本研究では,あらかじめシステムに用意された設計理由の中から設計者が選択することによって設計理由を入力し,それを設計理由をノードの構成要素とした木構造に変換することによりシステム内で利用することとしている.支援方式としては,設計者はすべてを自分の考えで設計するのではなく,少なからず過去の事例の影響を受けているという観点から,CBRの枠組みを用いたアプローチを利用している.
設計理由を利用した支援機能として以下の機能を実装した.
(1)設計理由構造による類似事例検索
(2)作業領域設計理由構造の任意のノードから対応する作業領域の部品(群)への参照
(3)事例領域設計理由構造の任意のノードから対応する事例領域の部品(群)への参照
(4)作業領域の設計理由構造の任意のノードから,検索された事例の対応するノードへの参照
3.システム評価実験
本研究室の学生(設計経験あり1人・なし3人)と他学科の学生(1人)の計5人を被験者として,本システムに対する評価実験を行った.同じ課題に対して,設計理由を利用しない場合(実験1)と利用する場合(実験2)の2回実験を行い,それらを比較することにより本システムの有効性の検証を行った.
実験結果より,本システム利用することにより,設計理由構造が付随することによる事例理解への効果,設計者の考えに沿った事例の提示による情報検索効率への効果,部品と設計理由の関連参照機能による事例の有効利用への効果を確認した.
4.結論
本研究では,レイアウト設計問題を対象とし,設計者の考えや好みに焦点を当てることにより設計を支援することを提案した.実装したシステムに対する評価実験からいくつかの項目に対して,設計理由を利用した支援の有効性を確認した.
今後は,さらに被験者を増やし,今回結論に至らなかった項目に関しても再検証を行う予定である.また,今回の実験結果から問題対象に関する知識を有する人に対する支援の効果が低いことが明らかになったため,その点についても改善する予定である.