色情報と距離情報の統合による相互反射領域の認識
井口研究室 和田 洋貴
1.はじめに
パターン光投影による距離画像計測における問題点の一つに,相互反射現象の影響で隣接物体のパターン光が映り込み,形状が正しく認識されないということが挙げられる.本研究の目的は色情報と距離情報を統合して相互反射現象が起きた領域の検出と正しい形状の測定をすることである.
2.相互反射現象
金属やプラスチックのような鏡面性物体には,光源方向や視線方向によって近隣の物体が映り込むことがある.このように光源から出た光が物体表面で反射し,再び別の物体に照射される現象を相互反射現象という.相互反射現象が生じた場合,パターン光投影法を用いると相互反射領域ではパターン光の映り込みが生じ,正しい距離画像計測が行えない.(図1)
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(a)相互反射が生じた画像 |
(b)映り込んだパターン |
図1 パターン光投影法における相互反射の影響 |
3.相互反射領域の検出
異なる位置の2つの光源を使って2組のカラー画像と距離画像を得る.このとき2枚の画像をそれぞれ基準画像,対照画像と呼ぶことにする.光源が移動しても内部反射の強度変化は明るさの変化だけであるため,RGB色空間におけるベクトルの変化は大きさのみで方向は変化しない.しかし相互反射,表面反射が生じた場合は観測される色が変化するため,方向も変化する.ベクトルの方向が変化した領域を色変化領域と呼ぶことにする.
距離画像では相互反射が起きない限り計測結果は一致するので2つの距離画像を比較したとき,その値が一致しないものは相互反射の影響である可能性が高い.しかしパターン光投影法はエッジ部分でぼやけることがあり,またカメラやプロジェクタの特性によりパターンの認識に誤差が生じるため相互反射が起きていなくても距離画像は完全には一致しない.そこで距離画像が一致しない部分とカラー画像によって検出した色変化領域を組みあわせることで相互反射領域検出の信頼性を高める.
4.実験
相互反射領域に関しては一方が正しく,もう一方が正しくない距離データを持っているものとする.今回は2つの距離画像から正しいデータを統合する実験を行う.基準画像で補正すべき領域は,相互反射が生じている領域と,パターン光の信頼性が低い暗い領域である.これらの領域は対照画像の距離データを用いる.色変化領域として検出されず,距離データが一致しなかった領域は計測の信頼性が低い領域であるとみなし,データを切り捨てる.図2に基準画像と対照画像から検出された色変化領域と距離データの不一致領域を示す.今回の実験は対象物体はすべて単色であるとし,領域分割をすることでどの物体上で相互反射が生じているかの判断が可能である状況で行った.これにより基準画像上で生じている相互反射領域を決定し,基準画像と対照画像の距離データを統合した.比較のため従来の方法での計測結果も示す.(図3)
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(a)色変化領域 |
(b)距離データ不一致領域 |
図2 色変化領域と距離データ不一致領域 |
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(a)従来の方法 |
(b)本研究の方法 |
図3 計測結果の比較 |
5.まとめ
色情報と距離情報を統合して相互反射領域を検出し距離画像計測における相互反射の影響を補正した.また,暗い領域の補正も行った.