楽譜データを用いた掛け合い型セッションシステムの構築
井口研究室 上田 健太郎
1.はじめに
現在,音楽情報処理の研究分野は多岐に渡っている.
音楽情報処理を研究のアプローチ方法で分けると,演奏情報や楽譜情報から音楽に関
する種々の認識を行う研究と,コンピュータによって演奏を自動的に生成する研究に
分けられる.
後者の生成系の中でも自動伴奏システム,演奏に対する表情付け,セッションシステ
ムと大きく三つに別れ,セッションシステムはコンピュータに即興的な演奏を行わせ
るのが目的である.
本研究の目的は楽譜データによる数小節単位の演奏フレーズを用い,掛け合い演奏を
行うセッションシステムを構築する事である.
2.システムの概要
入力された演奏はフレーズ化され,フレーズの特徴量を抽出し,データベース化され
る.また,システムはあらかじめ幾つかのフレーズのデータベースを持っており,演
奏入力から抽出された特徴量によって検索を行い,システムが演奏を出力する.また
,出力する際により人間らしい演奏を行わせ,インタラクティブ性を高めるためにそ
の時々の入力によって,出力される演奏に表情付けを行う.
今回は演奏入力の特徴量によって,あらかじめ用意したデータベースから演奏フレー
ズを検索し.出力する部分について実現を試みた.
3.システムの処理
今回実現したシステムは,入力された演奏から特徴量を抽出し,その特徴量からフレ
ーズのデータベースの検索を行い,演奏を出力するものである.
楽譜データによる演奏フレーズのデータベースには今回,ジャズのTwo-Fiveモーショ
ンに限ったフレーズを376個用意した.これらのフレーズを検索するため,有効と
思われる特徴量を検討した.
4.特徴量の抽出
検索を有効に行うため,フレーズに対して種々の特徴量を求めた.これらのうち,有
効と思われる特徴量について今回のシステムのデータベース検索に用いた.
5.今後の課題
今回は演奏フレーズの楽譜データによる掛け合い型セッションシステムのデータベー
スの検索のためのシステムを実現した.
今後の課題としては特徴量の妥当性のより詳しい検討,他の特徴量の検討,また,デ
ータベースとのマッチングの問題がある.
また,システム全体の実現に向けて他の部分の実現を目指していく.