直動固定型パラレルメカニズムの作業領域の評価
新井研究室 村田 嘉一
1.はじめに
直動固定型パラレルメカニズムとは、アクチュエータを全てベースプレート面にお
き、直動スライダによってリンクの下端をベースプレート面上で動かす方式のパラレ
ルメカニズムである。この機構の長所は,各リンクの位置決め誤差が手先で平均化さ
れ高精度な位置決めが可能であること、コンパクトかつ多自由度な動作が可能なこ
と、手先の発生力が大きいこと、剛性が高いこと、可動部が軽量化でき運動特性がよ
いこと、エンドエフェクタ部がコンパクトに設計できることである。一方、短所の一
つとして作業領域が小さいことが挙げられる。本研究では直動固定型パラレルメカニ
ズムの作業領域の評価にもとづく機構の比較や、各機構の最適パラメータの設定を行
う。
2.直動固定型パラレルメカニズム
直動固定型パラレルメカニズムとして、ベースプレートが正三角形のデルタ型機
構、三本の放射状のY型機構、正六角形のヘキサ型機構、六本の放射状のアスタリス
ク型機構、の四種類を考案した。以下図1から図4に示す。
図1 デルタ型機構
図2 Y型機構
図3 ヘキサ型機構
図4 アスタリスク型機構
3.作業領域の評価方法
作業領域の評価の難しい点は、パラメータを変化させると、作業領域の大きさも変
化する点にある。そこで、作業領域の体積を機構自身の体積で割った体積比を比較す
ることによって、作業領域を評価する。しかし、機構自身の体積を厳密に定義するこ
とは困難であるので、本研究では機構を三角錐、または六角錐で近似して、その体積
を求めた。この評価方法の長所は、大きさの異なる、同じ機構を比較することができ
ること、似ている機構の比較が容易にできることである。短所は、機構自身の体積の
定義に曖昧さを含むため、厳密に体積比を計算ができないこと、作業領域の評価を作
業領域の体積によって評価しているため、体積比が大きな機構でも、全ての作業に適
している機構とはいえないことである。
4.作業領域の体積比
作業領域の体積は逆運動学をもとに求めた。各機構の作業領域の体積比が大きい機
構のデータを図5に示す。ここで、傾き角とはエンドプレートが水平から傾いている
角度を表している。
図5 各機構の作業領域の体積比
図5より、Y型、デルタ型とアスタリスク型、ヘキサ型の順に大きな作業領域の体
積比を持つことがわかる。この理由として、機構自身の体積の違いとリンクの変位に
対するリンクの上端の垂直方向への変位の違いにある。
5.結論
本研究では、パラレルメカニズムの一種である直動固定型パラレルメカニズムの機
構を四種類考案し、各機構の作業領域の体積比を求めることにより、その特徴や最適
なパラメータを求めた。今後の課題としては、直動固定型パラレルメカニズムの精度
にもとづく評価も行い、求まった最適な機構の設計、試作、制御方法の考案を行いた
い。