操作の木構造表現を用いたビデオリモコンインタフェースの評価

井口研究室  森内 正樹

1.はじめに

 年々高機能・多機能な家電製品が開発され,我々の生活は非常に効率的なものになっている.しかしそれらの機器はインタフェースも非常に複雑で,我々はそのインタフェースを簡単には使いこなせなくなっている.また今後,そのインタフェースがさらに複雑になることも予想される.そこで今,家電製品のインタフェースをヒューマンインタフェースの観点から,より使いやすくすることが重要であると考えられる.
 本研究は,操作インタフェースとしてリモコンインタフェースに注目し,現在のビデオリモコンインタフェースを評価することを目的とする.それに合わせて,操作の評価手法として操作の木構造を用いることの有用性を示すことも目的とする.

2.操作の木構造

 本研究では,“メニュー画面における操作方法”を木構造を用いて構造化し,操作方法の評価を行った.
 ここでは,操作方法を個々の節として,木構造を構築する.まず,メニュー画面において節となる操作方法を性質の違いから,「項目指定」「入力」「実行」「表示」の4つのタイプに分類する.その各節に,「画面の切り換えの有無」,操作の実現方法である「操作の属性」,「操作するボタン」,ユーザに操作方法を示す「画面表示」,その操作により実現される機器の「機能」をあわせて記述する(図1).
 今回は,既存のビデオデッキ6台のメニュー画面操作を,上記のルールに基づき記述し,解析することにより,
など,操作の相違点を抽出した.



図1 操作の木構造の例

3.実験

 2.の項で述べた操作の木構造を用いて抽出した操作の相違点において,使いやすさに差があるのか否かを,学生5人と主婦4人を対象としたユーザテストにより検証した.ここでは,「項目指定操作法の違い」の実験の結果について説明する.
 図2に所要時間の平均・標準偏差,及び有意差検定の結果を示す.この結果より,type A の所要時間はtype C と比べて短いと言える.しかし,被験者が実験中にリモコンを見る回数の検討を加えると,より深い階層の項目を選ぶ場合,type A の操作法の所要時間が,相対的に延びることが推測される.


図2 被験者が項目を選ぶのに要した時間の平均

4.まとめ

 本研究では,操作の木構造を作成するためのルールの作成を行った.この操作の木構造を用いて,既存のビデオリモコンインタフェースの問題点・相違点を抽出し,ユーザテストにより検証した.
 今回の実験により,操作方法の異なるインタフェースが,それぞれ長所・短所を持ち合わせていることが確認できた.それと合わせて,インタフェースの操作方法を評価する際の一手法として,操作の木構造を用いることの有用性を確認することができた.