対話の円滑さの呼吸曲線による解析
安永 崇
1.はじめに

現状ではインタフェースの問題点を見つけだすのに人間の曖昧な主観に頼る部分が多 々ある.この人間の主観に頼っていた部分が呼吸曲線を用いることで定量的に扱えた ならば,人間にやさしいインタフェースが正しく実現できるだろう. 本研究では人と人とのコミュニケーションにおいて,スムーズにコミュニケーション が行われている場合とそうでない場合を呼吸曲線から判断し,さらに人間の主観でな く呼吸曲線による客観的なコミュニケーションメディアのインタフェースの評価を試 みている.

2.実験

コミュニケーションの円滑さの評価に呼吸曲線が利用可能か検証し,さらに評価に 利用できる特徴を抽出し,その特徴の一般化を行う.その基準を用いて対話の円滑さ を評価することによってコミュニケーションのメディアによる円滑さの違いを評価する.

3.実験結果

相手の台詞を聞いている状態における通常の滑らかな呼吸曲線の途中に,時折図1 の矢印の部分のような波形が現れる.この波形の特徴は,呼気の途中で急に吸気が開 始されている点である.この波形は自分の台詞の開始がつかめてない場合によく見ら れるようである.VTRの観察による評価と対応させた場合,この波形が見られる時 刻に明らかに口を開けて発話しようとしている場合が見られた.
今後はこの「急な息継ぎ」を用いて.対面会議と音声のみによる会議における対話 の円滑さを評価する.図2に対面・音声のみのメディア別の発生頻度を示す. 対面対話においては4人同時に対話を行っているにも関わらず,音声のみの対話に おけるような「聞き取りにくい」「内容がわからない」などの主観報告は得られなか った.
また,タスク達成に要した時間を解析した結果,音声のみの対話の場合にタスク達成 に要した時間が長かった.すなわち,対 話が円滑に行われていないと言える.このとき図2で「急な息継ぎ」の発生頻度が音 声のみの対話の場合に高く成っている.このことから,「急な息継ぎ」が対話の円滑 でない場合の基準として有効なことが示せた.

4.まとめ

本研究では,呼吸曲線によって対話の円滑さが評価可能かどうか検証し,実際に対話 の円滑さの評価行った.しかし,呼吸曲線で評価できる状況はある程度対話の内容に 限定される.あらゆる状況の対話の円滑さの評価を行うためには,呼吸曲線だけでな く皮膚電位・心拍などの生理指標も合わせて用いることにより,各生理指標の特徴を 利用した対話の「円滑さ」の評価が望まれる.