ジェスチャーを利用する文書提示システムの試作と評価
沖倉 寛信
1. 背景

現在コンピュータは、目覚しい発展を遂げ企業のみならず一般家庭にまで普及し、コンピュータの需要はとどまることなく大きくなってきている。しかし、コンピュータと人間との間は、依然としてマウスとキーボードといった機械的なインターフェイスのままであり、新しいインターフェイスの実現がなされていない。そこで、本研究では、よりリアルなインターフェイスの実現を考え、その表示システムについて提案する。

2. インターフェイスの提案

既存のデスクトップでは、マウスやキーボードといったインターフェイスでコンピュータと人間との間を結んでおり、一般生活の中で言う「書類を出す」・「書類を読む」といったような操作を行ってはおらず、リアルなインターフェイスとは必ずしも言えない。そこで、本研究では入力にジェスチャーを利用したより自然なインターフェイスを提案し、それによる文書提示システムを考える。

3. 研究目標

このようなシステムの内、本研究では表示部に注目し、表示システムの構築を目指す。具体的には、次の通りである
4.表示システム

表示部への情報は、一旦、WorldModel と呼ぶ model 内で処理・操作が行われ、その後対応する操作を表示する構成になっているシステムを構築した。

5.心理実験

5-1 実験目的
この表示システムでは、ユーザがジェスチャを行ったことを計測してから、提示を行い、提示が終了して次のジェスチャの計測にとりかかることになる。従って、ユーザにとってジェスチャーを行ってから提示され始めるまで、どの程度であれば許容できるのかを調べる必要性がある。また、提示され始めたとしてもその提示にかかる時間が遅ければ、やはりユーザに不快感を与えてしまう。 これらのことから、この2点に対して考察する必要性があり、心理実験を通して考察していく。

5-2 実験方法
この実験では、文書を提示する一連の操作に注目してその応答遅延を計測する。まず、被験者は、このシステムを使いやすいような位置がどこであるのかを決めてもらう必要がある。そのために、まず左上と右下の位置を示してもらうことにより、被験者にとっての画面位置を計算機に記憶させる。その後、空間上のある平面 より奥に手をおいてもらい、この平面より手前に引くことで文書を提示するジェスチャーを行ったものとする。これが計算機に伝わると文書を表示する。この表示の際に遅延を加え、この遅延 を様々に変化させた場合において、被験者が感じる印象をアンケート調査し、その結果から応答遅延の最大許容量を求める。

5-3 結果と検討
この実験を7人の被験者に対して行った。その結果、算出された応答遅延の総平均は0.24秒であった。従って、この値以下であればユーザはジェスチャーから提示までの時間において許容できる範囲内にあると考えられる。しかし、他の値と比べると1つだけ大きい被験者がいたため総平均値が上がってしまったと考えられ、この値を除いたものを平均すると、0.21秒となる。こちらの方が、値としては適していると考えられる。

6.まとめ

ジェスチャーを利用する文書提示システムを提案し、それを構築した。また、構築したシステムを用いて心理実験を行い、その結果について考察を述べた.