3自由度マイクロフィンガーの運動評価
大谷 芳樹
1、はじめに
生物、医療、工学分野など様々な分野での対象物の微小化に伴い、微小対象物に対す
る微細作業手法の確立が求められている。このような微細作業を行うマニピュレータ
は、コンパクトかつ多自由度な動作を要求される。この要求を可能にする機構として
パラレルメカニズムの適用が考えられ、スチュワートプラットホームに基づく、2本
指マイクロハンドが提案されている。しかし、ここで用いられるフィンガーモジュー
ルでは、実際的に3自由度が要求されており、6自由度構成は冗長であり、また設備
的にも無駄である。3自由度でも十分微細作業が実現でき、3自由度のほうがよりコ
ンパクトであり、より経済的に機構を構成できる。ただし必要な動作を得るためには
構成の工夫を要する。
以上より、本研究では、3自由度2本指マイクロハンドを念頭におき、パラレルメカ
ニズムを用いた3自由度マイクロフィンガーの運動解析を行う。
2、運動学
図1で示す機構には構造上、動作に対しての拘束条件が生じる。それはリンクがそれ
ぞれエンドプレートの座標系において、ある決まった平面上に拘束されることである
。この条件より逆運動学を求める。また、マイクロマニピュレータにおいてはヤコビ
行列を定数化し、制御に用いる。その際に必要となる微小変位解析を示した。
3、プロトタイプ
本研究では、極めて小さなボールジョイント、ピンジョイントなどを実現しなければ
ならない。そこで2種類のフレクスチャジョイントを採用する。ひとつめのフレクス
チャジョイントは、回転軸まわりの回転は容易に行えるものの、それと直行する軸方
向の回転に関しては、剛性を保つようなものである。ふたつめのフレクスチャジョイ
ントはボールジョイントをバネで置き換えるものである。リンクを支えると同時に、
アクチュエータの伸縮によって生ずるリンクの動きに柔軟に追従させるものである。
以上の2つの微小ジョイントの有効性は、多くの論文において述べられている。
プロトタイプを設計するにあたって、パラメータを決定していく。ベースプレート、
フレキシブルジョイントは加工上の限界まで小さくする。フレキシブルジョイントと
フレクスチャジョイントのなす角度αが決まれば、他のパラメータも決まる。αを1
5度おきに15度から75度で、動作領域の体積を調べた。この結果、αが大きくな
れば体積が増えることがわかった。ただ、その変化量は数パーセントであるので、α
による動作領域の差はほとんど無いことがわかった。よって、全体の形状のバランス
を考慮してαを45°に定めた。以上のパラメータでのプロトタイプの動作領域を求
めた。
4、終わりに
コンパクトなマイクロマニピュレータを設計するために、パラレルメカニズムを用い
た3自由度マイクロフィンガーの運動解析を行った。また、2種類のフレクスチャジ
ョイントを用いたプロトタイプを提案し、その動作領域を求めた。
今後の展望としては、プロトタイプを作成すると共に、実動作の評価を行い、コンパ
クトな2本指マイクロハンドを開発することがあげられる。