リードタイムの長い工程を含んだ
ジャストインタイム生産システムにおけるスケジューリング手法
野口 雅史
近年,多く見られる生産システムにジャストインタイム生産システムがある.これは,生産における無駄や無理をなくして付加価値を高めるために,各工程で,必要なものを,必要な時に,必要な量だけ生産供給する方式である.
ジャストインタイム生産システムには引っ張り方式が不可欠であるが,リードタイムが計画周期より長い工程が存在した場合,その工程において最終工程の需要を見て生産を行なうことが困難である.本研究では,予測された最終工程の需要を用いることにより,リードタイムが計画周期より長い工程のスケジュールを作成する手法を提案し,シミュレーションによりその有効性を議論する.
本研究では,リードタイムの長い工程として自動車の塗装工程を考える.
モデルとして,ボディーライン,塗装ライン,最終組み立てラインの3つのラインが順につながっているモデルを考える.本研究では全て単一工程であるとみなす.
工程モデルの中で,塗装ラインの中の塗装工程では1度塗り部品と2度塗り部品があるものとする.
実際に生産を行う場合,最終工程のスケジュールSを予測し,その予測スケジュールからボディーラインに投入される部品のスケジュールを作成し,そのスケジュールに従って生産をする.
スケジューリング手法として,次の4つを考える.
手法1 予測スケジュールに合わせて,最初のものを2度塗り部品とする
手法2 予測スケジュールに関係なく,最初に2度塗り部品をまとめてスケジュールする
手法3 予測スケジュールに関係なく,2度塗りを平均的に分散してスケジュールする
手法4 予測スケジュールに関係なく,最後に2度塗りをまとめてスケジュールする
不良品の割合が変化する場合と2度塗り部品の割合が変化する場合をシミュレーションし,上記4つの手法を比較する.評価は1つ1つの部品における納期ずれの平均で行うものとする.ここで納期ずれとは納期と実際に部品が納入される時期とのずれを意味するものとする.今回の場合は遅れても早くても重みをつけず同評価とした.
シミュレーションの結果,不良品の割合が変化する場合も2度塗り部品の割合が変化する場合も手法3が最も納期ずれが小さくなり,優れていた.2度塗り部品の割合を増加した場合には特にその傾向が顕著になった.
まとめると,塗装工程を含んだジャストインタイム生産システムにおける塗装工程を含んだラインのスケジュールを,最終工程の予測スケジュールから作成する手法を考えた.結果,2度塗り部品を分散するスケジューリング手法が最も納期ずれが少なかった.
今後の課題としては,部品が遅れて到着する場合と早く到着する場合の納期ずれの値にそれぞれ重みをつける,スケジューリング手法の改良などが挙げられる.