果物の表面特性の時間変化の計測と表現
久保田 洋孝
1.はじめに

果物の色,つやなどの表面特性の変化は熟度,酸度を知るのに重要な情報源となる.本研究では対象をトマトとし,時間的な表面特性の変化を,RGBとスペクトル分布の観点から計測・解析を行い,CGによる表面特性の時間変化の表現を試みる.

2.表面特性について

多くの果物は,反射光が内部反射光と表面反射光との線形結合で記述できる2色性反射モデルで表現できる.内部反射は,物体本来の色を示すものであり,トマトの場合は緑から赤に大きく変化する.また,表面反射は光源の色を示し,強度分布は「つや」や「なめらかさ」といった情報に関連がある.

3.計測とデータ解析

計測はハロゲンランプの照明下,RGBカメラとスペクトルメータを用い,12時間おきに14日間行った.スペクトル計測は同一箇所の色変化を計測した.

3.1.スペクトル分布
スペクトル分布の解析には主成分分析を用いる.主成分分析を施すことで固有ベクトルと各固有ベクトルについての主成分得点が得られる.第1主成分は緑から赤への変化を示す成分,第2主成分は赤の輝度変化に関係する成分であると考えられる.また,各主成分ごとの主成分得点の変化に時間軸に対する関数をフィッティングする.

3.2.RGB
トマトのハイライトを含む同一断面での時間変化に着目する.断面の強度分布は前章で述べたように表面反射と内部反射に分けて考えることができる.
3.2.1.内部反射のパラメータ
内部反射にはLambertの法則を用いる.これは,反射光の強度(Id)は入射光の強度(IL)と入射角(θ)のみに依存するものであり,次の式で表される.
  Id=kdILcosθ=KDcosθ
    kd:内部反射係数 KD=kdIL
上の式を用い,KDの値の時間変化を求め,その関数によるフィッティングを行う.

3.2.2.表面反射のパラメータ
表面反射には,Phongのモデルを使う.入射光の正反射方向と角度φだけ異なる方向へ反射する表面反射光の強度(Ir)はcosφのn乗の割合で減衰し,次の式であらわされる.
  Ir=krIL(cosφ)^n=KR(cosφ)^n
    kr:表面反射係数 KR=krIL
nは表面反射光の強度分布の広がりを表すパラメータで,nが大きくなるほど広がりは狭くなる.この式を用いてKR,nの値の変化を求める.KRとnの時間変化の関数によるフィッティングを行う.

4.表面特性パラメータの時間変化の復元

主成分得点と固有ベクトルを用いてスペクトル分布の再現を行い,色の連続的な変化を再現する.そしてこの色の変化と反射特性の変化のパラメータを用いてトマトの3次元形状モデルにレンダリングを施し,表面特性の変化のシミュレーションを行う.