単一画像からの道路の3次元形状復元
川崎 剛照
自律移動車両の誘導方式として視覚を利用する研究は各方面で行われている。 車両
の誘導に視覚を用いることの理由は、なにより画像の含む情報の豊かさが 挙げられ
る。しかし得られる情報が多いことは、入力画像から必要な情報を抜 き出す際の問
題点にもなる。さらに、知能自動車の自動走行を考えた場合、重要 なタスクは道路
に沿った走行と先行車両の発見であり、屋外道路の高速 走行を目標とする場合には
、車両近傍だけでなく遠方の道路状況を知る必要がある。即ち、視覚誘導のために画
像中から抜き出さなければならない情報は、車両の走行環 境と与えられたタスクに
依存する。
本研究では、道路環境を走行する知能自動車を対象に視覚誘導のための情報のひとつ
である3次元道路形状を復元する手法を提案する。
一般に単眼画像から物体の3次元形状を復元することは不可能であるが、 対象とす
る物体に関する知識があれば、その物体形状などに関する拘束条件から3次元形状復
元を行うことができる。道路形状の3次元復元においては、事前知識として「道路モ
デル」という考え方がよく 使われる。これは対象とする道路を限定することで、そ
の道路の持つ射影特徴を知識として道路モデルを構築し、このモデルとの照合により
3次元復元を行う手法である。最も簡単なものとしては、直線道路のみを対象とし、
直線道路の道路境界が画像中で直線に射影されることから道路領域を推定する方法で
ある。しかし実際の道路は、直線道だけでなく曲がり道もあるため、モデルとしては
不十分と言える。より柔軟な道路モデルとして、Dickmanns[1]らは、 道路面の形状
は水平方向と縦断方向の二つに分けて記述され、水平面形状と縦 断面形状はそれぞ
れ相互に接続する直線と円弧により定義されるという道路モ デルを用い、道路境界
線の射影をシグモイド関数で近似することで道路の3次元形状を復元した。高速道路
のような予め計画的に作られた道路の場合、直線と円弧という道路モデルは有効であ
るが、一般道路には円弧で表 現できないカーブも多数存在するため、すべての道路
環境で利用できる訳ではない。例えば、山道のように複雑なカーブの変化 や勾配の
変化のある道路を考えると、このモデルではフィッティングできる道 路形状に限界
がある。
そこで、本研究では、道路の持つより一般的な特徴である道路の平行性を仮定した、
道路モデルを提案する。 このモデルは、道路境界線の接線から生じる消失点と、そ
の接線に直交する平 行線から生じる消失点との関係を用いている。実際には、上記
の道路の平行性に関する消失点の関係を滑らかな輪郭曲線がロバストに抽出できるス
ネークモデルのモデル変形のためのエネルギー項として定義することで、道路発見の
ためのモデルを実現する。そして本モデルは、道路境界線を抽出できるだけでなく、
2つの消失点による道路表現を満たした対応関係を持つコントロールポイント対を抽
出することができ、このコントロールポイント対から、道路の3次元形状の復元が可
能となる。