高解像度全方位視覚センサの試作
岩田 直
近年移動ロボットに関する研究が以前にも増して盛んに行われている。ロボッ
トが未知環境内を自律的に移動するためには、その環境下でロボットが現在どのよ
うな状況にあるかを理解し、適切な判断を行う必要がある。そこでロボットに
センサを搭載し、そのセンサ情報をもとに自己位置・ 姿勢の推定や未知物体
との衝突回避などを行うことになる。
センサとしては超音波、レーザー、カメラ等があるが、中でも視覚センサは
ロボット周辺の状況を知る上で有効なセンサである。さらにこの視覚センサの
中でも、全方位視覚センサは実時間の全方位情報を獲得することが可能であり、
ロボットが移動するために必要な外界情報を獲得する入力手段として有望視さ
れている。また全方位視覚センサとして双局面ミラーとカメラを用いた
HyperOmni Visionは従来の全方位視覚センサと比較して、入力画像を透視投影
画像に変換できる等の利点を持っていることから、移動ロボットの視覚として
だけでなく、テレビ会議システムやテレイグジスタンスのような、人間がモニ
タリングする目的に対しても有望視されている。しかし、既存のHyperOmni
Visionでは標準的な固体撮像素子(800×600画素程度)を用いているため、
透視変換画像を生成した場合解像度が低く、モニタリングには不十分であった。
本研究では、この全方位視覚センサの高解像度化についての検討並びに高解
像度全方位視覚の試作を目的とする。この目的を実現するためには、全方位視
覚センサの受光部に有効画素数が多い高分解能素子を用いる、という方法が考
えられるが、一般に全方位視覚では回転体ミラーを用いているため、非点収差
や球面収差などの影響を受け、結像系において最小錯乱円のサイズを小さくす
ることが難しく限界がある。そこで本試作では、画素数は同じでも解像度を上
げる方法として、画素ずらしによる高解像度化を試みる。
画素ずらしによる高解像度化に関する評価実験を行い、その有効性を確認した。
さらに評価結果を踏まえ、高解像度視覚の試作を行った。本試作は最小錯乱円
の大きさを、撮像素子の画素の大きさ以下になるように設計している。さらに、
試作した高解像度全方位視覚を用い、テレプレゼンテーションやテレイグジス
タンスの応用として、任意方向透視変システムを構築した。