エッジ情報を利用した画像圧縮
井下 哲夫
1.はじめに
ステレオ方式の立体テレビシステムにおいては,左右2枚の画像をリアルタイムで伝
送しなければならない.そのため画像情報の圧縮が不可欠となる.ステレオ画像の圧
縮方式には,帯域圧縮方式やMPEG応用方式,輪郭視差伝送方式などが提案されている.
本手法では,ステレオ画像の情報圧縮を目的とし,輪郭視差伝送方式をさらに推し
進める.すなわち,エッジベースの対応付けを行い,得られた情報と視差情報を伝送
することで情報圧縮をはかる.今回は1枚のエッジ画像から原画像を復元する手法に
ついて報告する.
2.エッジ情報の抽出
まず原画像を2次微分した微分値からゼロクロス点を抽出する.ゼロクロス点間に挟
まれた極大値(負の場合は極小値)も抽出する.この抽出したゼロクロス点と,極値
とそれらの位置情報を加えたものの集合をエッジ情報と定義する.エッジ情報を抽出
する際に最大値,最小値の小さな微分値をしきい値によって削除することで,大幅な
情報圧縮が実現できる.しきい値の決定方法は(1)固定しきい値(2)変動しきい値の2
種類を用いた.変動しきい値では画像の高周波領域,低周波領域に着目し,しきい値
を決定した.
3.微分画像の復元
得られたエッジ情報を補間して,ちゅう密な微分画像を復元する.補間方法には線形
補間を用いた.
4.原画像の復元
原画像を画像ベクトルとみなすと,ラプラシアンフィルタ処理は線形演算で表される
.それにより線形演算の逆演算を施すことで原画像を復元できる.
5.実験結果
原画像(風景画)に対して本手法を適用した.1回に処理するブロックの大きさを8
×8,16×16,32×32画素とした.ここでは原画像と(1)固定しきい値での復元画像,(2)変動しきい値での復元画像の結果をしめす.
(1)しきい値,ブロックサイズ,圧縮率
20 | 8×8 | 79.5% |
20 | 16×16 | 63.9% |
20 | 32×32 | 57.3% |
40 | 8×8 | 53.4% |
40 | 16×16 | 37.9% |
40 | 32×32 | 31.3% |
(2)しきい値,ブロックサイズ,圧縮率
1 | 8×8 | 106% |
1 | 16×16 | 90.3% |
1 | 32×32 | 83.7% |
5 | 8×8 | 87.3% |
5 | 16×16 | 71.8% |
5 | 32×32 | 65.2% |
10 | 8×8 | 73.4% |
10 | 16×16 | 57.9% |
10 | 32×32 | 51.2% |
6.まとめ
本論文では,画像を圧縮する方法に,エッジ情報を用いることに着目し,エッジ情報
から原画像を復元する手法を示した.ここで提案した画像圧縮・復元方法はエッジ情
報に基づいている.そのためもう1枚の画像との視差を与えるだけで,ステレオ画像
へ容易に拡張することができる.