半導体のウエハ製造装置の温度プロセスにおけるモデリング
藤田 篤史
1 はじめに

半導体のウエハは以下のプロセスで製造される。

(1)チャンバー内に常温のウエハが搬送され、石英の上に置かれる。
(2)置かれたウエハには、600度強という温度において、上方より化学ガス(シランガス)が吹き付けられる。
(3)化学ガスを吹き付けることによりウエハの上にシリコンが成膜される。

現存の製造装置では、ヒータにより加熱されたウエハの均熱性が良くないため 成膜されたシリコンの厚みにムラができる。ウエハは定量規格の大きさに裁断さ れ、半導体チップの製造に使用されるのであるが、シリコンの厚みにムラができ ると、ウエハの使用できる部分が限られてしまい、すなわち、製品としてあまり よくないことになる。
また、ウエハは1枚ずつ外部より常温のまま搬送されてくるので、装置内の温 度がその度に下がることになる。その下がった温度をいかに早く元に戻すか、い わゆる温度リカバリーが重要になってくるのである。
当然、製造装置を使用する側からの要求として、単位時間当たりの製造枚数の 増加およびウエハの面内均熱性の保持が挙げられてきている。
以上の問題点を解決するために、温度制御系を構成するという立場から、

(1)温度リカバリーを早くすること
(2)ウエハの面内均熱性を保持すること

の2つの仕様を達成できるか否かを検討する。制御系の構成のためには、製造装 置における温度動特性を同定する必要がある。そこで本研究では、この動特性の システム同定を目的とする。

2 モデリング

ヒータに電力を入れることによりウエハの温度が変化するまでの過程を同定す る。ヒータとウエハの間には石英があることより、ヒータに入れられた電力から ウエハの温度変化までの過程を細かく区切り、各過程の伝達特性を統合すること により、全体の伝達特性を求める。

3 おわりに

モデリングについては、実験データに基づいたシステム同定の結果、対象の動 特性を表す数式モデルが得られた。今後の課題としては、得られたモデルに基づ き、第1節で述べた2つの仕様を達成する制御系を設計し、数値シミュレーショ ンにより、その効果を確認することが必要である。
半導体製造装置の分野では、数式モデルに基づいた制御系の設計はごく最近始 められたばかりで、本研究の結果は、その分野の研究に大きく寄与するものと考 えられる。